当院で扱う主な疾患
うつ病
概要
「気分が落ち込み、寝付きは悪いし途中で起きる。休日は外に出ることも億劫で、今まで楽しめていたものが楽しめなくなった。ミスばかりするようになってしまい、どうにも自分はもうだめなんじゃないかと思えてきて、生きていこうという気力も湧きません。
何が理由でこうなったのかもわかりません。私はうつ病なのでしょうか?それともただの怠け者で甘えているだけなのでしょうか?」このように聞かれることがあります。
国際的な診断基準から言えば、そういった症状が2週間以上続けばうつ病だということになりますし、そこまででなくとも軽症、中等症として治療の対象と考える場合もあります。ただ、うつ病の本態というのは、脳がうつからなかなか抜け出せない状態に陥っていることであって、そういった症状を本人が困りごととして感じているならば、私はその時点で治療すべき疾患なのだと考えています。
原因と経過
うつ病はストレス、遺伝、睡眠リズムや食事といった生活習慣など複数の要因が複雑に絡み合って起こると考えられており、原因がはっきりしない場合も多いです。
ただし、知人の死やパートナーとの別離など大きな喪失感を伴うようなストレスに加え、繰り返されたり長期に続いたりする環境的なストレスも一つの大きな要因となりえます。
上司から能力が低いという扱いを受け人格否定的な言葉が繰り返される、逆に能力が高いということを口実に仕事を不平等に押し付けられる。パートナーに日常的に怒鳴られたり明らかに対等ではない扱いを受けたりする。今まさに他者からの攻撃を受けていなくても、幼少期のからかいやいじめ、親からのブスバカといった言葉がいつまでも脳裏に焼き付き、自己否定的な考えに囚われてしまう。こういったありふれたストレスであっても、信頼できる人に相談したり、相手の視点を推察し状況を客観的に捉えられるように情報を整理したり、全く別の趣味に没頭したり、人によっては仕事に邁進するなど適切なストレスコーピングがなされなければ状態を段々と悪化させてしまい、やがて日常生活に支障をきたすことにつながることもあります。
うつ病は重症になると、日常生活が送れるようになるまで何年もかかることがありますし、治ったと思っていても今度は特に理由がはっきりしないのにまた同じような状態になってしまうなど、繰り返される症状として一生付き合っていくことになる場合もあります。
そのため、より早い段階でこの問題に対処することは重要であり、「大変なのは自分だけではない」「もっと症状の重い人もいる」「まだ限界ではない」と我慢し、誰かに相談することを控える必要はないです。今の状況を自分の言葉で話すだけでも、自分が今どんな状態なのかということを理解する端緒となりえます。
治療方針
まずは自分の状態を知ることが重要です。うつ病では、自分は今どういう状態で、そもそも何が普通なのかがわからない、といったように病識が乏しいことも珍しくありません。
うつ病における心理的視野狭窄やネガティヴ思考のループ、客観的な評価の難しさは悪循環を生み出し、しばしば治療へのアクセスを阻害します。ですから、まずは治療が必要な状態であるということをちゃんと理解し、その後に、実際のうつ病治療である「休養」「薬物療法」「精神療法」が始まります。
すでに学校や仕事に行けなくなっている状態で受診される方も少なくないですが、診察し、療養が必要であると判断した場合は診断書を作成し、休学ないし休職対応を勧めることがあります。
どうしても症状に波があり、長期に及ぶことも多いですが、ちゃんとストレスから離れて療養することができれば回復を目指すことは十分期待できます。長時間労働が続き過労になっているなどストレス因の要素が大きいと、より休養が望ましいと考えられます。
そんなのは当たり前だと思われるかも知れませんが、過労の渦中にあり、周りの人も忙しくしていると余計に視野は狭くなり、休養の必要性すら見えなくなってしまうことも珍しくはないのです。あえて感覚的な表現をすれば、適切に休むことで症状が改善に向かうと、今まで視界に入ってこなかった世界が広がり、いかに悲観的な思考に囚われていたのかと気がつくのです。
人間はどうしても自分のやってきたことや主張に一貫性を保ちたいと考えますし、そうしなければ不安定になりやすいのですが、あくまでうつ病は疾患であり、本当の自分ではなかったのだと切り離して考えることも時には有効です。
うつ病で使われる薬としては抗うつ薬や抗不安薬、非定型抗精神病薬などがあり、睡眠薬が一緒に使われることも多いです。抗うつ薬と聞くとなんだか強い薬のような気がして抵抗があるという方も多いですが、基本的に依存性はなく、やめられなくて困るということはないです。現在使われることの多い新しい抗うつ薬(SSRIなど)は古い抗うつ薬(三環系など)と比べると副作用も少なくなっています。飲み始めは吐き気や眠気、倦怠感などの副作用が目立つ場合がありますが、1~2週間飲み続けることで収まってくることが多いです。ただし、実は双極性障害(躁うつ病)で内服後に元気になりすぎてしまい問題行動を起こしてしまったり、性欲低下や性機能障害、単剤で高用量でもなければかなりまれではありますがセロトニン症候群やQT延長など困った副作用もあったりしますので、何か気になることがあれば早めにご相談いただければと思います。
抗うつ薬は重症にのみ使うべき薬というわけではなく、実は使いやすいお薬であるのかなと思いますが、飲んですぐ効くというお薬ではありません。効果が出るまでに2~3週間、しっかりとした効果となってくるまでには数か月以上かかることもある長期的に使うことが前提のお薬になります。実感としても、「すごく落ち込むことは減ってきたような気がする」「気が付いたら以前みたいな落ち込みはなくなったかもしれない」ということも多いかと思います。
それに対して、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬が使われることが多い)は即効性があり、依存性のあるお薬になります。俗には精神安定剤と呼ばれることもあり、抗うつ薬と比べると抵抗感が少ない人も多いですが、多剤かつ長期になっていくと耐性や依存性が問題となる、いわゆるクスリ漬けのリスクのある薬でもあります。
もちろん適切に使えば大きな心配はないですし、痛みに対する痛み止めのように、不安時などの頓服として使うのもいい使い方だと思います。苦しい気持ちに対して何か対策があるというだけでも少し気持ちが楽になり、その安心感は真の治療効果になりえます。心理的に、逃げ道がない、何の打つ手もないという恐怖感は強く、そういった強い負の感情から一時だけでも逃れようとして自傷行為に至る場合もあります。もちろん自傷行為が常にそういった理由だけで行われるわけではありませんが、それが癖のようになったり、自尊心の低下につながったりすることで悪循環に陥ってしまうこともあります。
非定型抗精神病薬は統合失調症のお薬でもありますが、気分安定薬以外の気分安定作用のある薬として双極性障害でもよく使われるお薬です。うつ病で第一選択になることは多くないですが、非定型抗精神病薬を一緒に使うことで抗うつ薬の効果を上げる作用が期待できます。
抗うつ薬とはセロトニン(俗に幸せホルモンとも呼ばれる)を増やしてあげるお薬であり、非定型抗精神病薬はドーパミンだけでなくセロトニンへの作用もあるため、セロトニン増強作用を高めることでより高い治療効果が期待できると考えられています。
うつ病と生活習慣に関連があるということは研究結果としても示されており、これに気を付けることも重要です。特に睡眠の問題はうつ症状としても出てくるため、うつ病により不眠症が出現→生活リズムが崩れる→うつ病への悪影響という悪循環が起こることがあります。古い睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)と比べ新しい睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬など)は依存性がないなど使いやすいものも多く、またそれぞれ違った作用機序による睡眠薬を組み合わせて使うことでより効果を高めることもできるため、不眠が不安の種となりストレスになるぐらいであれば、しっかり睡眠薬を使って安心して眠れた方がいいということは多いです。また、抗うつ薬の中でも副作用として眠気がきやすいもの(ミルタザピンなど)を使うのも不眠を伴ったうつ病に対しては有効です。
適応障害
症状としてはうつ病と基本的に同じですが、原因となっているストレスから離れると比較的速やかに改善することが多い点は異なります。
例えば、仕事に行こうとすると動悸がしたり、涙が出たり、とにかく行きたくないなと思ったりするが、休日は趣味を十分に楽しむことができる。休日も仕事のことが頭から離れず症状が続くようになってしまったが、仕事から離れると数か月かけて徐々に元の状態に戻る、という場合が多いです。あえて端的な表現をすれば、うつ病は非可逆的なうつ状態、適応障害は可逆的なうつ状態と考えるとわかりやすいかもしれません。
ただし、実際は常に明確に区別できるものではなく、連続した病態と捉えることができる場合もあり、適応障害を繰り返したり、長期に患ったりすることで徐々にうつ病へと移行していってしまうリスクがあります。そのため、最初は適応障害と診断されていても、経過からうつ病に変更する場合もあります。
治療についても基本的にはうつ病と同じですが、うつ病と比べ比重は「休養」>「薬物療法」となり、お薬による治療は行わないことも多いです。そして、適応障害の治療において特に重要となるのが環境調整になります。いったん治ったと思っても、そのまま同じ環境に戻ってしまえばまた同じ症状が出てくる可能性があるためです。つまり、環境を変えるか、ストレスへの対処法を獲得する必要があるわけで、もちろんどちらの要因がより大きいかを考慮し治療に反映すべきですが、実際のところ後者よりも前者の方が対処しやすいことが多いです。治療として直接できることが少ない場合もありますが、例えば仕事がストレスとなっているが会社に相談ができていない状態であれば、まずは会社と建設的な相談ができるように、どのようなことがストレスになっているのかを確認し、環境調整として部署移動や時短勤務が必要なのか、またそれが可能であるのかなど、今後の方針を一緒に考えることはできます。そういった「立て直し」を計るにもまずは状態をよくしてから、重要な判断はうつ状態から脱してから行うべきであり、状態によっては初めから休職を勧めることもあります。
ストレスへの対処法の獲得として、認知行動療法など「精神療法」が有効な場合もあります。適応障害は責任感が強く、几帳面、まじめな人がなりやすいとも言われています。「これはこうでなければいけない」という信念は、もちろん高い精度で仕事を遂行しようとする場合に必要となることもありますが、特に周りの人とギャップがある場合は心理的に自分を追い詰めてしまう原因にもなります。どういった思考の偏りがストレスの原因となる行動やその結果に結びついているのか、それを紐解いていくのは問題解決の糸口となりえます。
また、環境調整が特に重要だと前述しましたが、環境を変えても繰り返し適応障害を起こす場合があります。こういった場合は、背景に発達障害や他の精神疾患があり、その二次障害として適応障害やうつ病を引き起こしていることがあるので、適応障害の治療というよりも、原因となっている精神疾患に対する治療を考える必要があります。
双極性障害
概要
気分の浮き沈み自体はもちろん誰にでもあるわけですが、それが極端となってしまうことで日常生活に困りごとが起きてしまうのが双極性障害です。障害という言葉を取り除こうという風潮のため双極症と呼ぶようになっていたり(英語ではどちらもBipolar Disorder)、精神科領域では2つの国際的な診断基準(アメリカ精神医学会による精神疾患に特化したDSM、 WHOによる身体疾患も網羅されているICD)が使われている関係で双極性感情障害(躁うつ病)とも呼ばれたりしますが、基本的には同じ病態をさしています。
気分の落ち込みはうつ病と共通する症状ですが、気分の高揚、躁状態を繰り返すという点が異なります。双極性障害の大きな分類としては、激しい躁状態を伴うⅠ型、うつ状態がより問題となるⅡ型、それよりも比較的軽い躁とうつ状態を長期に繰り返す気分循環性障害の3つがあります。亜型として、気分は落ち込んでいるのに行動は活発になるなど気分・思考・行動がちぐはぐとなる混合状態を伴うものや、躁とうつ状態を急激に繰り返す急速交代型が知られており、自殺率が高まるなどのリスクが指摘されています。
双極性障害では薬物療法が有効であることも多く、必要性を理解し内服を継続するということが重要となってきます。治療薬は気分安定薬と非定型抗精神病薬がよく使われ、3つの病型に共通していますが、躁状態もしくはうつ状態のどちらかにより効かせたいのかなどで処方の選択も変わるため双極性障害において分類して考えることは重要です。
双極性障害Ⅰ型
「なんだかとっても気分が良くて今ならなんだってできそうだ、理由もないのに」「ちょっとしたことでブチギレてしまう」「寝なくても元気で、一晩中作業に熱中してしまう」「気が大きくなって、後で考えると信じられないほどの散財をしてしまった」「急にどこか遠くに出かけたくなって、なんの計画もせず出かけてしまう」「アイデアが次から次へと湧き出てきて、実行に移す間もないほどだ」
こういった気分の高揚が顕著で、かつ社会的な障害となるような場合は双極性障害Ⅰ型の可能性があります。例えば、職場で激昂し、「こんな会社辞めてやる」と言ってそのまま退職してしまったり、気分の高揚に任せて暴走運転してしまったり、性的に解放的な気分になって逸脱行動をしてしまったりするなど。うつ状態がはっきりしないこともありますが、基本的にはこういった期間がうつ状態と交互に現れ、うつ状態の方が期間としては長い傾向にあります。うつ状態の時には躁状態の自分に対して「なんで自分はあんなことを言って(して)しまったんだろう」と自己嫌悪になってしまうこともあります。
双極性障害Ⅱ型
気分高揚の程度が社会的な障害となるほどではなく(軽躁状態)、むしろうつ状態が問題となっている場合は双極性障害Ⅱ型の可能性があります。軽躁状態では、本人は「調子がいい」と感じているだけで特に意識していないこともあります。「年に何回か何もできなくなる期間があって、仕事が続かないです」こういった主訴で来院される方もいらっしゃいます。このために、繰り返す気分の波というより持続するうつ状態と捉えられ、短い軽躁状態の期間が見逃されてしまうことで、うつ病と誤診されていることが実は珍しくないということがわかっています。しかし、うつ病との鑑別は重要で、抗うつ薬だけでの治療をしてしまうと、急速に躁状態になってしまう(躁転)リスクがあり、これを続けるうちに急速交代型へ移行していってしまう可能性も指摘されています。
気分循環性障害
気分が不安定で、軽度のうつと軽躁を頻繁に繰り返します。社交的で、多弁になってしまうような時期があったかと思うと、誰とも話したくなくなって連絡先を消してしまったりします。やる気が出て作業を始めたかと思うと、途中で嫌になってしまいなかなか完成しない。結果として人間関係や仕事を継続させることが難しくなり、離婚や転職を繰り返しているという場合があります。著しい問題行動や長期的に何もできないということはないけれど、生活が不安定になってしまい、気分の不安定性をさらに悪化させてしまいます。
問題点として、性格だと考えてしまい治療に結びつきづらいことが挙げられます。お薬によって改善する可能性もありますので、あまり自分の問題だと思い詰めずに、少しでも「自分にあてはまるかもしれない」と感じた際には精神科で相談することをお勧めします。
不安障害(パニック障害など)
概要
不安障害は恐怖に対する過度な不安や過剰反応による困りごとであり、その恐怖の対象によって分類されています。恐怖の対象が「人にどう見られているか」であれば社交不安障害と呼ばれ、視線恐怖症や赤面症と呼ばれることもあり、対面での食事や人前での発表などの場面で起こります。「いざとなった時に逃げられない」という恐怖であれば広場恐怖症と呼ばれ、電車や車、人ごみ、閉め切った部屋の中などで起こります。その他、特定の物や場面への不安障害は限局性恐怖症と呼ばれ、高所恐怖症やクモ恐怖症、先端恐怖症などがあります。特定の対象でなくとも、仕事や家庭など複数のことに対して漠然とした不安があり、緊張したり怒りやすくなったり、筋肉の緊張による肩こりや頭痛、睡眠の問題など様々な症状が持続している場合は全般性不安障害の可能性があります。また、恐怖の対象がないはずなのに突然パニック発作が起こることもあります。そして、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が恐怖の対象となり、繰り返しパニック発作を起こす場合はパニック障害と診断される可能性があります。パニック発作では実際に何か体の病気があるのではないかと思い内科を受診したり、救急要請をしたりすることもあります。検査上は異常がないと言われ、精神科受診を勧められ来院される方もいらっしゃいます。
パニック発作と自律神経
全ての不安障害で必ずしもパニック発作が起こるわけではありませんが、受診の契機となることは多いです。本当は命の危険があるような状況ではないはずなのに、死ぬのではないかというくらい強い恐怖に襲われ、心臓はバクバクし、息が苦しくなり、冷や汗が出て、手足がふるえるなどの症状が出ます。これには自律神経という、心拍や呼吸、体温調節、消化など生命維持に必要となる様々な活動を無意識下にコントロールしてくれている機能が関わっていると考えられています。自律神経は、交感神経という戦闘モードと副交感神経というリラックスモードの2つの相反する働きのバランスによって成り立っており、例えば交感神経優位となれば脈が速くなり血圧が上がるのに対して、副交感神経優位となれば脈は遅くなり血圧が下がります。戦闘モードなわけですから、迅速に動けるように心臓は激しく鼓動し全身に血液を潤沢に送り出し、息を荒くさせできるだけ多くの酸素を取り込み、筋肉を強張らせ、熱を冷ますために汗が出ます。つまり、パニック発作による症状とはその多くが急激な交感神経の過緊張によるものであって、生命にかかわるようなレベルの緊急事態だと脳が誤認してしまうことにより引き起こされます。パニック発作の本態とは恐怖に対する過剰反応、交感神経の暴走なわけですが、交感神経の過緊張に対して反射的に副交感神経優位になるという防衛機能(迷走神経反射)があるため、急激に血圧が下がることで血の気が引くような感覚に襲われ、意識を失ってしまうということが起こることもあります。全般性不安障害などではパニック発作までの急激な症状が出ることは少ないですが、交感神経優位がだらだらと持続してしまうことで自律神経のバランスが崩れ、動悸や頭痛、不眠など様々な症状が出てきてしまいます。また、正式な病名が付かない場合などでは、単にこういった状態を指して自律神経失調症と呼ぶこともあります。
治療
抗うつ薬というとまるでうつ病のためのような名前の薬ですが、不安障害でも使われます。むしろ、パニック発作など不安障害の症状に対する抗うつ薬(不安障害では特にSSRIの有効性が高いと考えられている)の治療反応率は高いと考えられており、うつ病よりも抗うつ薬の重要性が高い疾患と言っても良いくらいかもしれません。抗うつ薬が効いてくるのは飲み始めてから2週間以上の時間がかかることが多いため、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を一緒に使うこともあります。抗不安薬は電車に乗る前など不安があるタイミングに合わせて頓服として使うのも良いと思います。また、薬物療法だけでなく、比較的大丈夫そうな状況から段階的に慣れさせていくことで改善を目指す暴露療法など認知行動療法を組み合わせるとより効果的であるとされています。
強迫性障害
概要
「そんなわけはないと頭ではわかっていても、そうせず(考えず)にはいられない」ことで日常生活に支障をきたしてしまうのが強迫性障害です。強迫性障害では、繰り返し頭に浮かぶ不快で不合理な考えやイメージにとらわれてしまう強迫観念と、それを打ち消そうとして繰り返し行う強迫行為という症状のうち少なくとも1つを認めます。例えば、細菌や汚れへの過度な恐怖(強迫観念)から何度も消毒しいつまでも手洗いを繰り返したり(強迫行為)、運転中に誰かを轢いてしまったかもしれないという不安(強迫観念)から何度も同じところに戻ってきて確認したり(強迫行為)、鍵のかけ忘れやガス栓の閉め忘れ、電気の消し忘れがどうしても気になってしまい(強迫観念)、何度も自宅に戻ってしまったり(強迫行為)します。他にも、自分の行いは道徳的/宗教的に正しいのか、物の配置が対称になっていない、特定の数字が絶対に避けるべき不吉と感じる、突然自分が電車に飛び込んでしまったらどうしようなどの恐怖や不安が対象となることもあります。もちろん手洗いや戸締りの確認自体が必ずしも問題となるわけではないですが、自分でも「そこまでやらなくてもいいはずだ」「そんなはずはない」とわかっていながらも「そうしなければ(そうでなければ)ならない」という考えにとらわれていることが強迫性障害の特徴です。
治療
強迫性障害はもともと不安障害にカテゴリーされていた疾患でもあり、薬物療法として不安や恐怖に対して抑制的な効果が期待できるセロトニン作用のある抗うつ薬(SSRIなど)が使われます。不安障害と比べると高用量での使用が必要であったり、効果が出るまでに時間がかかったりすることが多いですが、継続して使用することで徐々に症状が改善されていくことは期待できます。強迫性障害でも認知行動療法は効果的と考えられており、「不安や恐怖の対象にあえて直面する」→「強迫行為を我慢する」→「実際には何も起きなかったという安心感を得る」ということを段階的に繰り返すことで症状の改善を目指す暴露反応妨害法などを薬物療法と併せて行うこともあります。